営業オークボの科学技術解説・アルミの溶接
営業スズシロ「おはようございます、オークボ先輩」
営業オークボ「おはよう、スズシロ。何飲んでいるんだ?」
(以下SとOで表します)
S「缶コーヒーですよ。最近は缶コーヒーもアルミなんですよ、以前はスチールばかりでしたよね。」
O「確かにそうだな。それには技術の発達もあるみたいだ」
S「でも、スチールの缶も良かったんですよね、重厚感があって。アルミになって寂しいような…」
O「スチールにそこまで思い入れがあるのか…?」
S「それはさておき。アルミ缶も溶接ってやってるんですか?」
O「切り替え早いな…。もちろんアルミ缶も普通に溶接して作っている。部分的には溶接していない場合もあるな」
S「アルミの溶接ってあまり気にしたことないですけど、ステンレスとかと同じなんですか?」
O「これが素材の特性上違いがあってな。ステンレスとアルミって溶接方法が違うんだ。アルミの特徴はまず融点が低いことだ。アルミは融点が660℃で他の金属と比較してかなり低いんだが、熱伝導率がすごく良いから熱が材料にすぐ伝わってしまい、材料自体に溶け落ちが起こるんだ。これを防ぐために交流の溶接機を使ったりしている」
S「なるほど、交流なら電極のプラスとマイナスが入れ替わり続けるからですね」
O「よくわかったな、その通りだ。でもこれだけじゃなくて、アルミの表面にやっかいな酸化被膜が形成されるんだ」
S「えっ? なんですかそれ。あるとなんかマズいんですか?」
O「この酸化被膜なんだが、融点が高いんだ。これが2000℃ぐらいで、アルミ自体の融点と大きく違う。だから酸化被膜を溶かそうとして溶けたとたんに、中の660℃の部分に到達してしまって母材が溶け落ちてしまう。これを防ぐために酸化被膜をあらかじめ除去しないと溶接なんか出来ないんだ」
S「なんて面倒な素材なんですか…」
O「さらに、銅の時と同じようにブローホールも発生しやすい上に、溶接割れも起こりやすい。溶接割れっていうのは溶接した部分が脆弱になることだ。だからアルミが溶接出来るように調整された溶接機だけが作れるんだ」
S「そんなにアルミの溶接が難しいとは…。前に依頼したハラサワにアルミの溶接をやってもらおうかと思ってたんですけど、どうなんですかね?」
O「ハラサワは丸めるのだけやってもらえたはずだ。でも溶接は出来なかったな。それにしてもアルミ溶接の問い合わせなんてあったのか?」
S「いえ、持ちやすい形のオリジナルコーヒー缶を作ってもらおうかと…」
O「個人的な物かよ!」