外注先で困ったこと-不具合解析が出来ない-

不具合を解析してこその信頼ですが…

残念ながらモノづくりの宿命とでもいいましょうか、常日頃からの品質管理と作業者の懸命の作り込みにもかかわらず、ある日不具合は発生してしまいます。客先からの一報を受けた瞬間から蜂の巣をつついたような慌ただしさで初動に駆り出されることに。

search_mushimeganeその後に待っているのは不具合発生の原因究明とその再発防止対策。「なぜ不具合は発生したのか」「なぜ不具合は流出したのか」。この二つの視点で現場への聴取や不具合現品、工程、治具、エビデンスの確認をもとに解析と対策の検討が進められるのが主な流れでしょう。しかし不具合が外注工程に絡んだ案件となるとこの流れも途端に仕事が滞ります。みなさまに似たようなご経験はないでしょうか。

不具合発生時は三現主義に基づき、現地・現場・現物の確認から解析と対策の検討を進めるのがセオリーではありますが、これを外注先の工程でしようとした場合、まず企業間調整から手間取ることになるため「原因調査と対策」を外注先自身に依頼するのが一般的です。jiko_chousakanところがこれが大概上手くいきません。発生原因・流出原因の解析を求めれば仮説の提示までは速やかにしてくれるでしょう。ですがその先の「仮説の実証」に進むことは稀。結局不具合の原因の解析結果は人為的過誤に行きつきがちで、対策も発生防止より流出防止に終始することが殆どです。

外注工程を請け負う企業の名誉のためにも明記しますが、彼らは本当に原因がわからないわけではありません。外注たちの多くは特化的な事業。職人肌の人間たちが多く、彼らには長年の経験により培われた経験則により、むしろかなり正確に要因の洗い出しができます。それでもそうしないのは、そちらの方が都合がよいからです。

受注のためにギリギリの価格で仕事を受けている外注先にとって、少々の不具合が出たからと言って、その発生防止対策に治具の改良や装置の追加など設備的追加投資をするなんて考えにはなりません。損益分岐の計算になぞらえてこの話をすると、発生防止対策では固定費(追加投資分の)が膨らみ、流出防止対策では不具合が出た時だけ、変動費が膨らむという構造になります。少量多品種のモノづくりが主体の中小企業にとって一度の生産で100ヶ、200ヶ程度しか流れない製品へ自社の資本を投入して発生防止に励むより、不具合が発生した時にだけちょこちょこっとそれをはじき出すような仕組みの方が好都合だし合理的なのです。tehepero3_business_ojisan不具合の発生原因をすべて作業者のせいにして一発面罵しておけば完了になるわけだからこれほど楽なことはありません。よって外注先の対応は「不具合出ちゃってごめんなさいね。次は流出しないように気を付けるからさ」というものになるわけです。

発生原因、流出原因の解析を客観的にできない。結論ありきの解析で真因にたどり着けない。有効な対策を打つことができない。それには外注先なりのやむを得ない事情がある。ですが発注元からすればそういうわけにもいきません。不具合品が発注元の取引先にまで流出した場合、取引先を納得させるだけの解析結果と有効性が確認可能な対策を提示しなければならないのですから。

akusyu_businessman外注工程の絡んだ不具合の発生時、本当に必要なのは実は科学的な解析とそれに基づいた対策の立案ではなく外注先との信頼関係なのかもしれません。その場凌ぎの対策よりも「この人の言っていることは正しい。従うことが利益になる」と思わせられる信頼関係がまず重要なのではないでしょうか。