製造業的人材育成 –モノづくりのように人材を育成する-
モノを作る工程は特定の材料を遅滞なく仕入れて、最終製品へと加工していくプロセスです。そのプロセス全体を通して、品質と納期の管理は欠かせません。こんなことは、モノづくりをする会社では常識でしょう。
ところが、モノづくりの会社において、若手人材を採用して一人前以上に育てる話になると、モノづくりの考え方が全く活かされてないことが多いようです。現場で日常的な作業も判断もできるし、後輩の指導もできるし、不良や故障などにも対応できる…。そんな当たり前の人材が、モノづくりで言う最終製品の形ですから、その最終製品を製造するために、適切な仕様を持つ原材料である若手社員を仕入れて、各種の加工である人材育成方法を重ねていく考え方を、「製造業的人材育成」と呼んでいます。
OJTとオフJTを組み合わせて計画的に行ない、そこで教えた内容をきちんと人材が身に着けていることを確認する。これも、モノづくりで言うと、加工をして検品する作業ですので、やって当たり前のことです。いつのタイミングでどのように加工するかも、関連部署の人は全員知っている状態の筈です。けれども、若手人材のOJTとOFF-JTを、納期を決めて、教育効果を実際に確認しながら進めている会社は、それほど多くないことでしょう。
モノづくりなら、昨年度の製造実績を見て、改善によって生産効率を上げようとするのは、当たり前です。より安く良い材料を求めて、仕入先を探したり、相見積を取ったりするのも、常識でしょう。
ところが、人材の採用の現場になると、より良い採用方法を数字的な根拠をベースに検討している会社は少なく、ネット系の採用媒体などに漫然と募集広告を出稿し続けたりします。採用面接だって、毎年おざなりで、より効果的に良い候補者を選抜する方法を積極的に試したりしている企業の話はあまり耳にしません。
そして、若手社員の議論をすると必ず話題になる離職率も、完成間近の仕掛品をスクラップに入れるようなものですから、モノづくりなら、かなり真剣に対応する問題のはずです。けれども、離職については、「若いヤツの考えることは分からない」などの漠然とした理由で課題解決から目をそむける会社の方が多数派です。
モノづくりの原理で人材採用や人材育成のプロセスを検証すると、その改善のポイントが非常に明確になるのです。