回帰的マネジメント-手書きでのメモ取り、会議書記

かつて多くの企業で若手や新人がさせられていた下積み仕事。実はこれが現代の指導上の課題にも今なお有効なのではないかと解説このシリーズですが、今回は『(商談、会議での)手書きでのメモ取り、会議書記』がテーマです。今でこそ録音音声からの自動文字起こしが実用レベルに達していますが、そうでなかったころの商談、会議での手書きだったメモ取、書記の作業は実は「物事の要点を掴むスキル」「コミュニケーションススキル」を養う良質な機会だったのではないでしょうか。

手書きでするしかなかった商談、会議での記録は速記スキルでもない限り、全ての内容を漏れなく書き留めることはできませんでした。しかしそれが逆に「全部書けないからこそ、大事なところだけ抜き出す」という要点を掴むスキルを磨く機会となっていたのではないでしょうか。また全て書ききれないことが前提となった場合、商談、会議の内容は誤解を含め十人十色の受け取り方になるために記したメモ、議事の内容に対して同席者の合意を取り付ける必要が出てきます。このようにただの書記スキルの訓練の機会だけでなく、合意形成のためのコミュニケーションススキルを磨く機会となっていたと思うのです。

とはいえ、文明の利器が溢れるこのご時世、『(商談、会議での)手書きでのメモ取り、会議書記』を新人・若手に指示しても反抗される場合が当然出てくると思います。そんな時は…

「確かに録音、録画をすれば情報としては100%漏れのない記録が得られるし、記録する側も機械任せにできるからとても楽だ。でも他の人に事の次第を伝えようとしたとき、例えば2時間かかった会議の録音、録画を全部見聞きさせるのは非効率的と思わないかね」

なんて切り返すのはいかがでしょうか。

ボイスレコーダーとノートパソコンを持ち込んで100%漏れのない記録を作ることもビジネス上、大事な場面は当然あります。ですが素早い情報展開の為には取捨選択と合意形成が必要不可欠。最終的には部下が「胸元にボイスレコーダーを忍ばせつつ、サクサクノートに要点をまとめ、取引先から内容に対する合意のサインを受け取る」というような仕事をしてくるようになれば、マネジメントの仕事としては首尾上々と言えるでしょう。