中小企業が臨むインダストリー4.0の世界

企業における業務上のIT活用が始まって以降その進歩は目覚ましく、ついには製造業のデジタル化・コンピューター化を目指した「インダストリー4.0」なるものまで提言されるようになりました。御社ではこうして事業のハイテクノロジー化が進む中、どのような舵取りをお考えでしょうか。

ai_shigoto_makaseruインダストリー4.0とは、第三次産業革命で実現されたコンピューター制御による生産工程の自動化に続く「第四次産業革命」という意味合いで名づけられたものです。

•相互運用性
– 機械、デバイス、センサーおよび人間が相互に接続し通信を行なう。
•情報の透明性
– 情報を解釈可能化させるため、システムがセンサーデータに基づいて実世界の仮想コピーを生成する。
•技術的アシスト
– 人間の判断・問題解決を支援する、および人間が行なうには困難または危険なタスクを補助する。
•分散的意思決定
– 現実世界の制御対象の様々な状態を「数値化」し、定量的に分析することで、「経験と勘」でしかわからなかった知見を引き出す仕組みによって意思決定できるようにし、できる限り自律化させる。

この4つが可能になることにより、人と機械が有機的に生産を行う、極限に管理、合理化、自動化された製造工程が実現されると言われています。

computer_punchcard_scientist一方でインダストリー4.0の実現により得られるものを端的にまとめると、「量産から特注まで、これまで以上に高効率で安定的な生産を実現できる」まででしかなくなります。さらに言えばこうした合理化、効率化の先にあるのは間違いなく事業形態の一般化による不毛な過当競争でしかないでしょう。科学が導き出す答えは「誰でもたどり着く同じ答え」なのですから。結局人間がしていたことを機械やAIが代替するだけのこと。極限大の合理化、効率化でのコストダウンによって一時的に利益を上げることはできても、価値を創生しているわけではないですから、chikaratsukiru_businessman最新の設備やシステムを導入できるかどうかだけが優位性を得られる数少ない要素となり、設備やシステムの導入競争、ひいては同じ事業形態に行き着いてしまった他社との価格競争になってしまうことが容易に想像できるのです。

また、合理化、効率化では一元的品質や当たり前品質は充足することができても、整理できないレベルの抽象的なニーズまでは満たせそうに思えません。人の心は混沌として、さらに移ろいやすいですから。ただそうした混沌と揺らぎにこそ、これから中小企業が狙うべき市場があるのではないでしょうか。確かにかつての産業革命でも機械工業の発展に伴い、手工業の多くが駆逐されました。ですが一部では人の手による仕事が逆に付加価値になって今も市場で高い評価をされているものがあります。ようは駆逐されてしまった手工業は機械工業が得意とする土俵で戦ってはいけなかったのです。価値が人の主観によるのはいつの世でも変わりません。job_syuri_tokei自分の目の前の顧客が何を求めているのか、それをどこまで追及できるかが中小企業のインダストリー4.0の世界で生き残っていくカギなのではないでしょうか。魅力的品質を生み出すのことができるのは心の機微を捉えたものだけです。

他の経営者が「そんなことやって儲かるの?」と怪訝そうにする事業こそ金山になる、それがインダストリー4.0の時代だと考えます。小規模であることのメリットがよりハッキリとする時代になるとも言えるでしょう。隙間を自力で勝ち取れるか。営業力のあるなし。サービスの提供力のあるなしがこの先中小企業の命数を決めるカギになるはずです。同様の示唆をしている書籍もあります。本書では「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」money_toushiと題して科学に基づく経営の限界と、
その打開策として抽象的判断の重要性を説いています。事業活動の合理化が進めば、価値のコモディティ化も進み、返って逆張りで非効率的で前時代的なものに価値があるような錯誤が起きるとも考えられるのです。