製品含有化学物質管理の大変さとは?
製造業を取り巻く環境の内、ますます厳しくなる昨今の製品含有化学物質の管理・規制ですが、この動向を受け前回から前後2編の構成でお送りしております。前回の記事では話題への導入として、日本で製品含有化学物質の管理・規制を意識することになった理由について整理した内容をみなさまに見ていただきました。今回は製品含有化学物質に関する管理・規制の要求とそれへの対応の実態に触れていきます。
さて、みなさまのお手元にお客様から「含有化学物質調査アンケート」や
「RoHS2.0 非含有証明提出要求」
「コンフリクトミネラル不使用調査」のようなメール、FAXが来たことはございませんでしょうか。
「非含有の証明となるエビデンスを添付の上、証明書をご提出願います」
「CMRTを期日までにご提出願います」
「IMDSにて報告を」
こうした依頼が書式やエクセルデータを添えられて送られてくるのがよくあるパターンです。ですが、「非含有調査」「不使用証明」などと言ってもどのようにすればいいのかわからない方も少なくないはず。最悪なんとなしに回答欄を「不使用」「非含有」として返答したくなるかもしれません。
ここで製品含有化学物質の管理・規制について実務経験のある方ならどのような対応をすればいいか一応わかりますが、そうでない場合は化学物質について見知らぬ単語や記号と格闘しながら指定されている禁止物質、規制物質の実際の用途(何に含有されているか)を確認しつつ、工程内で使用している原材料・添加物、消耗品に問題がないかどうかを逐一確認していくことになります。また「非含有調査」「不使用証明」について専門の分析機関や研究所に依頼が必要なことまではイメージできても、どこに頼めばいいかわからないし、頼もうと思っているところの信頼性も評価しようがありません。それに一回当たりの分析費用が数万から数十万円もして負担として大き過ぎます。
元請け企業はサプライヤーに対して契約書や仕様書、調達ガイドラインで要求の達成を求めてきますが、達成が難しい場合もあります。そしてサプライヤーは客先からの多くの要求に応えねばならない立場にますます追いやられます。しかしそのために必要となるコストの対価は多くの場合まず得られません。結果としてすればするほど赤字になる仕事ばかりを抱えることになり、最終的には禁じ手である「イカサマのような手段」を使うしかなくなりつくしかなくなるのです。そうなれば虚偽の報告を原因としてPS ONEの大惨事のようなことがまた起きることになるでしょう。
規制への対応自体は不可避なものなのです。ただ、世の中そのために必要となるコストを自社の営業努力のみで埋められる企業ばかりではありません。最悪の結果を十分予測した上で、できるところが負担を負うべきなのではないでしょうか。頭を抱える問題になりそうです。