今どきの部下を伸ばすには?「上司のすごいひと言」
・「部下が使えない」そう感じるあなたのマネジメントは本当に正しいでしょうか
現在指導担当として後輩の面倒を見られている方、あるいは部下を持ち、そのマネジメントが仕事になっている方々。本音を言えば、少なからず彼らに「使えない奴だ…」と嘆息したことがあるのではないでしょうか。今回紹介する一冊はそんなあなたにうってつけの一冊、「部下が自分で考えて動き出す
上司のすごいひと言 著:板越 正彦」 です。
この本ではかつて自分がされたように指導を行った結果、マネージャーとして大失敗したインテルの元エース級社員だった著者の挽回策となったマネジメント手法がモデルケースを使って描かれています。書の端々で語られる著者のかつての失敗には、現役バリバリのプレイングマネージャーなら「あるある」と思わず頷きたくなる一節もあります。
書で紹介されるコーチングを主軸としたマネジメント手法は、序章の段階ですでに大まかにまとめられています。モデルケースとする部下のキャラクター設定、それに対してどのように内発的動機付けを促し、仕事上の貢献に結び付けるか。『「管理で動かす」から「ワクワクで動く」』。書のこの一文に著者の語りたいマネジメント手法の全容が集約されています。
以後の展開は①モデルケースの展開、②モデルケースの中に散りばめられたマネジメント手法の要素の整理③モデルケースでの質問&リスニングの効果の形で統一された内容となっており、各章のエッセンスである②だけ切り出してご紹介すると第1章は部下の価値観の主軸、内発的動機付けの強化要因と低下要因を模索、あぶり出しと仕事上の貢献への結び付け。第2章は部下へのヘルプ、気付きの促し。3章は部下へのモチベート。第4章は部下へのフォロー、ケアといった構成になっています。
特徴的なのは、この書の中のマネージャーの言葉の中に、「命令は一つもない」ということ。飽くまで本人の行動を促すまでなのです。部下の価値観上の主軸を絶対否定せず、その延長線上に業務上の課題を乗せていく。正直初読では作中で登場するモデルの部下たちに「こんな部下ではダメだろう」と思わず閉口しまいましたが、この書の良い点は上手くいかなかったときや、想定されるダメな部下に対してどのようにすべきかも言及されている点です。
著者自身が当初は部下に寄り添うような対話をすること自体に懐疑的だったことが綴られていますが、書中にある「自分が厳しい上司に鍛えられたから、自分も厳しい上司になって鍛えなければいけないという考えはもう通用しない」というインテルの当時のCEOの言葉には私も思わされるものがありました。
採用において選り取り見取りに人材を選べるはずの大手企業でさえ、「豚もおだてりゃ木に上る」の人材育成をしなければならないのです。この記事を読まれる方々の多くは栄光の花を手にするために、苦闘の丘を踏破するのを躊躇いもしなかった方々。上司や先輩に面罵されつつ、反骨心を燃やして「なにくそ」と燃え上がり、成功を手にした方々でしょう。そんな方々がこの書籍の手法をすんなり受け入れられるかを考えると、その心中察するものがあります。ですが、今となっては成果主義をすべてとするアメリカの大企業ですらそれを否定する時代になっているとこの書では語られています。
自らのマネジメントの方法を見直す材料の一つとして、一読されるのも良いかもしれません。