『海外外注先との意思疎通』-報告で困ったら

過去の記事でも外注先での工程が関係した不具合が起きた時、外注工程を請け負う企業の諸々の事情からその原因究明と対策の検討・実施に難航するというお話をいたしましたが今回はある企業が海外メーカーとの取引で直面した「外注先との意思疎通が難しい」という事態にフォーカスしてみます。普段からの管理体制の問題で工程の変化点や異常が検出できない話も以前触れたものですが、それとは違う課題、落とし穴があるというのを読んでいただければ幸いです。

「治具検査は100%実施だ」「治具の日常点検で摩耗はゼロなのを確認している」

「工程上の不具合発生率は0%だ」「発生したNGは確実に漏れなく赤箱で識別・隔離している」

不具合の原因究明を進める中で海外の外注先から得られる報告が矛盾している。「ではなぜ今回の不具合が発生・流出したのか」を問うとなかなか進まない。普通であればありえない事態で、可能性としては「報告自体に不備がある」との評価に至り、それ以上遠隔で原因究明できず有効な対策にたどり着くことができません。

だからこそ頭の片隅にでも「必ずしも嘘」が矛盾の原因ではない場合がある、ということも意識しておかねばなりません。外注先側の報告者に相応の技術的知見がある場合、こちら側が出す問い合わせや確認要求の意図を理解してもらえるのもあって原因究明と対策はスムーズに進んでいきますがそうでない場合「意思疎通の上で齟齬が生じる」「報告者の報告・説明が適切でない」といった原因で原因究明が行き詰まります。また報告者に適当な地位や権限がない場合でも「報告者が聴取・確認で事実を拾えていない」「報告者にとって未知の不具合発生・流出ルートがある」といった課題を解決できず、やはり行き詰まります。

海外の 外注先での工程を経過する場合、品質管理と不具合対策の上ではどこまで行っても自身でなぜなぜ分析の手順のように予め異常・不具合が生じる可能性あらゆるパターンを洗い出しておき、その上で聴取・確認やエビデンスの請求をせねばならないのです。残念ながら今回記事にした企業の場合では最終的にコロナ禍にも関わらず現地確認と直接の指導、対策要求をせねばならないところまで至ってしまいましたが、任せた仕事に対して十分なリスクヘッジなくしては事が上手く運ぶはずもないのです。特に海外メーカーとの取引では通訳担当を介して対応が進められるため、こうした行き詰まりに直面するのは珍しいことではないのです。