海外生産からの国内回帰

多くの製造業が海外に仕事を吸い上げられ、不況に嘆くようになって久しいですが、一方で最近は「製造業の国内回帰」という話を聞くようになってきました。高騰する人件費、かさむ拠点や事業の維持管理コスト、企業の海外進出が相次ぐ中で縮まっていく優位性、現地の様々なカントリーリスク、あるいは為替レートなども理由に挙げられているのを目にしますが、弊社の取引先で「海外から舞い戻ってきた受注が多くて大変だ」というお話を聞くと、どうも別な理由によるように感じます。

結局、圧倒的コスト安を誇る海外生産でも、仕組みで利益を生み出すビジネスモデルな以上、規模もなく定型化・自動化しても利益性が薄い(と思われた)仕事は見切りをつける他ありません。こうして見捨てられていった仕事が国内に戻ってきているのが、国内回帰の正体ではないでしょうか。

ただ、回帰した需要が国内企業にとっての活路の一つなのは間違いありません。キヤノンは海外が持て余した方の仕事を掴む戦略でいるようですが、中小企業には製造業の海外生産ビジネスにおける残存者利益を狙い、少量多品種生産のように海外での生産では採算の取れないと見捨てられた方の仕事をかき集め、そこから利益を絞り出す戦略を取ることが現実的に見えます。何しろそちらは数多あるわけですから。

何より、多種多様な注文に即応し、高い品質で安定的に製品を供給する。そうしたビジネスは機動力を武器に戦う中小企業のいつもの適した姿と思われます。弊社の取引先もそうした企業の一つだったのでしょう。この「当たり前の中小企業」が最大の武器であり、「当たり前の中小企業」が健在な限り、やはりものづくりは「ジャパンアズナンバーワン」なのです。