「半熟ゆで卵のレシピで解説 プロセス管理と品質保証-3」
「半熟ゆで卵のレシピで解説-プロセス管理と品質保証」シリーズ。第3稿目は4M要素「Method(方法)」の影響について。
「Method(方法)」は4M要素の中でも変化点が生じ易く、その影響が頻発する要素ですが、これを極端な例を用いてご説明します。すでに茹で時間と大きさを統一したのにそれでも半熟ゆで卵のでき上がりにバラつきがある…。そこで調理方法を観察した結果、調理の都度やり方が違うことがわかりました。
①「冷蔵庫から出したばかりの卵を」「卵がすべて浸かる量の沸騰したお湯に入れ」「所定の時間茹でた後は流水で冷やす」
②「(夏冬問わず)室温で保管していた卵を」「特に定めていない量の水を入れた鍋に投入し、火にかけ」「調理者の適宜判断したタイミングで茹で時間管理のタイマーのスイッチを入れて茹で時間を管理し」「所定の時間茹でた後は常温で放置」
この2パターンのどちらがよりでき上がりがバラつくか、みなさまならお分かりいただけますよね。②の方が調理の度に卵の温度状態、加熱影響、調理時間、余熱影響がバラつき易く、結果としてでき上がりがバラついてしまいます。
実際の制御・管理でもベテラン作業者や職人たちの仕事を観察してみると「材料の置き方」「加工機への投入方法」「製品・材料の向き」「箱への詰め方」「製品・材料の持ち方、運び方」など非常に細かな点まで一定であるのが分かるはず。職人たちがしている工夫の一つひとつがプロセス管理の一端なのです。
プロセス管理が定着していない企業の価値観からすると、「方法」を固定してしまうと作業上の融通、作業者の創意・工夫をする余地がなくなり、目の前で発生している不良への処置・対応が禁じられてしまうようで、実態に合っていない管理手法の様に感じられるかもしれません。ですが、検査工程で製品の持ち方、見方、動かし方が標準化されていないと検査の仕方の違いによるミスが発生したり、結果がどうなるか検討・試行もされぬまま本工程・量産工程上で「トライ&エラー」をするとその場の確認では顕在化しなかった不具合が客先や市場で発生するリスクがあるのもご想像いただけると思います。
「Method(方法)」を固定することで品質を管理する、リスクを回避する。さらに言えば「Method(方法)」を固定することで、固定してなお不具合が出る場合、その原因を絞り込むことがしやすくなるという効果も期待できる。もちろん事業モデルによってはマッチしない場合もあることは承知していますが、ぜひ御社でも導入・活用をご検討ください。続く。