半熟ゆで卵のレシピで解説プロセス管理と品質保証:前編

ISOの取得は中小企業の間でもかなり進んでいますが、「なぜ製造工程を管理することが品質の制御に関係するのか」についてを理解している人は残念ながらあまり多くないというのが私の実感です。職人気質の作業者からすれば、自分の仕事のでき栄えも確認しないで「良し」とすることに強い違和感を覚えるのでしょう。正常な感覚だとは思いますし、そうした品質管理の手法が「当たり前」の文化の中にあってはプロセス管理にあまり縁がないのも無理ないといえます。

しかしそのままでいては、「形だけのQMSで実態としてはでき栄え管理の文化のまま」なんてことになり、必要な管理がされていなかったり、不要な管理がされていたりと穴だらけ、ちぐはぐなことになるでしょう。何より、でき栄え確認では評価し難い品質、管理しがたい生産量もあるわけで、こうした場合に対応できません。自社のものつくりに関わる人々にあまねくプロセス管理の理解を広めることは、ひいては自社の品質向上にもつながるということ。今回の記事はこの課題の解決に普段私がしている説明の仕方をみなさまにご紹介することでみなさまの一助となればと考えて書いたもの。シリーズものとして品質管理、品質保証の基礎要素を半熟ゆで卵のレシピに例えながらみなさまにご説明していきます。今回はその予告編です。

私が現場の人にプロセス管理を理解してもらうためによく用いている「半熟ゆで卵のレシピ」の例え話。身近に感じるテーマを使うことで理解を促すことを意図した説明の仕方ですが、「1,000ヶ全て半熟ゆで卵を作るためにはどうすればよいか」を起点にプロセス管理と品質保証の様々な要素を矛盾なく解説できるので非常に便利で「解り易い」と好評です。例えばこんな感じ…。

ゆで卵は割ってみるまでちゃんと半熟の仕上がりになっているかはわかりません。当然割ってしまったゆで卵もお客様には納められる状態ではありません。ゆで卵1,000ヶを割って確認することなく、確実に「半熟」の仕上がりにするにはどうしたらいいのか。

試しに卵を5ヶずつ3分、8分、15分と湯で時間を変えて茹でてみたとします。すると…なんということでしょう! 8分の場合ゆるゆる、半熟、固ゆで一歩手前の卵が混在する仕上がりだったのです。

このトライによって湯で時間はおよそ8分近辺でどうもちょうど良さそうなことがわかりました。これが「半熟ゆで卵の湯で時間に関する製造条件、加工条件」となるわけです。これでこれからは、湯で時間8分で茹でれば「ゆるゆる、半熟、固ゆで一歩手前の卵が混在する仕上がり」に茹でることができるようになったわけです。

このようにして品質を管理するプロセス管理の手法ですが、ここでみなさまに宿題です。今のままでは「ゆるゆる、半熟、固ゆで一歩手前の卵が混在する仕上がり」までしか品質を制御できていません。より仕上がりの精度を高めるにはどうしたらよいでしょう。制御のためのポイントはいくつもあります。これを考えながら次回のネタを読んでいただけたら幸いです。続く。