「ちょこっと改善が企業を変える」のにどんなことが必要?
昨今のコロナ禍の影響を受け、製造業業界でも元請けの減産に伴う受注減が各所で聞かれますがみなさまのところではいかがでしょうか。今回ご紹介するのは『ちょこっと改善が企業を変える: 大きな変革を実現する42のヒント 柿内 幸夫 (著)』。2012年に出版された一冊です。通常は新しい本をご紹介しておりますが、この不況を乗り越える具体策の一助になるのではないかとこの一冊をピックアップしました。読みやすさを強調するために差し込まれている4コマ漫画の部分は不要に感じますし、端々から感じる著者の見解は楽観的過ぎるとも感じますが、その上で部下や後輩たちに読ませ、実際取り組みをさせていただくにはちょうどいいとも思います。
内容としてはどちらかというと指導者側になったばかりの、経験の浅いマネージャーに向けたような初歩的かつ基本的内容が大半です。ただ、本書全体を通して主張されているボトムアップの活動の大事さ、現場作業者一人ひとりが会社を今よりもっと良くしようすること、そしてそれを促すことの重要性は苦境にあってこそ機動力が強みの中小企業に必要となるものと考えます。
3つの章からなる本書はⅠで改善を進める上で生じる課題と改善を進める上での動機付けの重要性が述べられ、特に『14経営者、管理者の役割』ではその後の章の内容にもつながる動機付けの具体的手法が示されています。Ⅱでは改善の具体的手法や必要な着眼点が述べられていますが、『23 16の改善キーワード』は改善の要点となる「5S」「7つのムダ」「動作経済の4原則」を取り上げており、改善を指導する上で基本的な部分です。最後のⅢでは会社が改善されていく仕組みについてフォーカスされていますが、この中の『36 人を育てる仕組みを整える』で人材育成の重要性が仕組みの整備の必要性とともに述べられている点をみなさまにもご注目いただきたいです。
経営者自身や会社幹部が細かい仕事まで請け負っていれば、中小企業の強みである機動力を発揮することはできません。
「今手が離せないから、アレやっておいてくれ!」
中小企業の中ではよく聞かれる指示ですが、これに対して
「アレとは?いつまでに、なにを、どのようにすればよろしいのでしょう?」
こんな言葉が返ってくるようでは機動力が落ちます。確かに普通に考えれば隙だらけの指示で、本来であれば指示として機能しません。ですがこんなことさえ言わないでも、部下が必要なことが、必要とされている形にしてくれる体制を実現できるのが中小企業。社員の主体性を養うトレーニングとして、また雑多な課題の直接的解決の負担を分散する手段として「改善」を推進させるのに本書が活用されれば幸いです。