回帰的マネジメント-1『カバン持ちと電話当番』
2017年の2月にお送りいたしました予告編では、みなさまがかつて下積み時代に上司や先輩たちにさせられていたことが、実は現代の我々の指導上の課題にも有効なのではないかとの示唆を記事にしました。そのため、『お茶くみと掃除』を題材の予定としておりましたが、それよりもまず営業の場面でこうした問題に直面することが多い事実から、少々変更して『カバン持ちと電話当番』を主題にお話をいたします。
今どきの新人を教育するに当たり、受注に至るまでの一連の営業プロセスをレクチャーしたりマニュアルを用意してその通りにさせようとしても、多くの場合上手くいきません。これは地道に努力する、ということに慣れていない場合があると思われます。そこで考えた手段が「カバン持ち」と「電話当番」です。
正攻法の指導をしようとしてもそこから逃れようとされてしまうなら、最初からそれを織り込んでの指導をすればいいまでの事。逃げ道に回帰的マネジメントを仕掛けるというのが今回ご提案する作戦。正攻法の指導をしつつ「まあ、こんなのは面倒くさいだろう?だからまず俺と一緒に営業についてきて、どういう風にしてるか見てればいいよ」と指導するのです。やがて門前小僧の習わぬ経のごとく、指導担当の営業プロセスを幾度となく目にしてその内なんとなくの習得を狙う。暗黙のままに営業のロールモデルを学ぶ。実はそんな効果がかばん持ちにはあると考えます。上司や師匠の背中を見て学ぶ学習法は昨今では否定されがちですが、そうではありません。
あるいは電話当番。「今日は暑いから(天気が悪いから)外回りなんてやってられんだろう?適当に電話当番しておいてくれればいいぞ?」とけしかければ「いいえ」という新人もそうはいないでしょう。ですが電話当番は応酬話法の基礎を学ぶ機会が詰まっています。客先からの問い合わせに応対する中で、自然と自社や製品の知識、業務のこと、営業トークが磨かれていきます。「そもそもうちの新人の電話応対は全然だめだよ」という声もあるかとは思います。今回の話とは別の話になりますが、そんな時はまず「電話当番は新人の仕事」と職場でルール付けしつつ、しばらく新人の横に付きっきりになって最低限の電話応対を訓練させればいいだけの事です。
時間はかかります。ですが、教育される側に求められるハードルは低く、抵抗されることも少ないはず。なんとか使える、ぐらいまで育てるという新人教育の手段の一つとして、こうした回帰的マネジメントをひとつお試しになってはいかがでしょうか。