外注先で困ったこと-品質管理の価値観が平行線
客先に供給する自社の製品の品質を管理、保証する上で自社の製造工程に心血を注ぐのはモノつくりする企業にとって当たり前の努力です。それとともに管理していかねばならないのが外注先の製造工程とそこからの仕入れ品の品質ですが、うまくいかないことも多々あります。その理由には企業間の利害の食い違いというのもありますが、それ以上に品質管理、品質保証に対する価値観の違いも原因しているように感じます。
受注を受け、製品を納入するとしてそのすべての製品の品質が顧客の要求通りの品質であることを確実にする方法は様々ありますが、ワンロット数千個、数万個の量産レベルのボリュームと、数十個、数百個の少量の場合で話がかなり変わってきます。少量の場合は製造した製品一つひとつに逐次の管理を行うのも可能ですが、量産レベルのボリュームとなるとそうはいきません。そのために量産品の扱いが主となることの多い発注元の企業では品質に影響を及ぼす製造工程上の要素を制御することにより、その結果である製品の品質を制御しようというプロセス管理の考え方が主流になりやすいのです。
対して少量多品種の製品を扱うのが主となることが多い企業にプロセス管理の考え方を当てはめようとすると、かみ合わない部分が出てきます。一時に数十個、数百個しか作らない製品の製造条件について多大な時間と労力を投じて管理値や管理幅の研究や技術的検証を行うより、不良が出たら都度調整の方が合理的なのです。価値観は「バラツキの制御」より「バラツキへの対応」、成果・結果への管理が主流になりやすいと言えます。
このようにして発注元と仕入れ先で互いが基準としている価値観が食い違い、なかなか発注元が求める品質管理が仕入れ先で実施されない事態が生じるわけです。さらに、発注元から仕入れ先に対してのコストダウン要求も大きな原因です。これが仕入れ先の経営判断を、管理コストを極力削る方向に促し、理詰めでモノつくりを行うほど、品質管理を疎かにさせるのです。
しかしそうであっても不具合がユーザーの手元で顕在化しない限り検出できない溶接や熱処理のような「特殊工程」と呼ばれる加工・処理。あるいは製造工程上、検出の難しい寸法上の品質管理にはプロセス管理によって「妥当性確認」が確実にされていなければなりません。コストはそこそこだけど、少量多品種の製造業であっても品質管理は他の同規模の中小事業者に比べてかなりしっかりしている。そんなQDCの程よいバランスをもった企業がきっとこの先も生き残っていくのでしょう。