【消去法の新卒採用】vol.1

第一章 中小零細で大卒採用

企業発展のためや人材不足の問題から、多くの企業で採用活動を行っているが、近年は経済の悪化などを理由に、採用枠の縮小や募集開始時期を遅らせるといった現象が見られる。そのような中で、中小零細企業が大卒の新卒採用を行い続けている話は、ほとんど聞くことはないだろう。
しかし、ハラサワでは7年間、新卒採用を続けている。前社長がハラサワの第二工場を監督していた当時は仕事も溢れる程あり、人材は常に不足していた。実質、第二工場の生産を担っていたのが、不法就労の外国人労働者であった。
若い労働力を安易に獲得するには、その方法しか当時は知らなかった。しかし、彼らはお金を稼ぎに日本に来ており、目標額に達すると未練も情もなく帰国していたため、社員も真剣に教育をすることも時間もなかった。こうした中で、不確定要素の多い中国人を雇い続けることは、果たして会社としてあるべき姿なのかと現社長は考え、前社長とハラサワの専任経営アドバイザーであるMSIグループの市川氏と共に新卒採用に踏み切った。

当時の既存社員と現社長では、納期を守らないことや品質に対しての意識など、価値観の違いがあった。
また、一人ができる業務内容が限られていたため、どんなに忙しくても自分の作業が終われば帰宅してしまう社員が多かった。こうした面からも、新しい人を雇うことで今までのやり方を改善し、自分たちでより多くの仕事をこなせるようになる必要性があった。

採用の対象は中途採用者、高卒者、専門卒者とあるが、その中でハラサワは大卒者に焦点を当てている。何故大卒者採用になったのか、勝義社長はこう述べる。

「極端に言うと、高卒者は我慢ができないと言われており、嫌な事から逃げ出すといった傾向がある。さらに大卒者と比べて、社会常識やアルバイトでの就労経験も少ない。また、中途採用者に関しては、前職での待遇や福利厚生に対して現職場との比較や批判をする可能性があり、既存社員のモチベーションに悪影響を及ぼす。その潜伏地雷を経営者・幹部が取り除くことは、潜在的な問題のため非常に困難である。さらに中途採用で仮に優秀な人材が入社しても、すぐに離職されたら元も子もない。
また、優秀ではない場合にも、採用活動の徒労とコスト、教育の手間(逸失利益)だけが残る形となる。
その結果、通常の業務にほとんど影響なく教育をし、単月黒字を早めに発生させるため、大卒者採用となった。」

実を言えば、ハラサワが最初に行った採用は、ハローワークが主体であった。
しかし応募してくる人の多くは、時間を守らない、履歴書の写真を貼らないなど、当たり前とされることさえできず、ハローワークからの人材に対して良い印象はもてなくなった。
それならば次世代を担う若手に教育を徹底して行った方が、中途採用者や高卒者を雇うよりも離職率を下げることができる。そのため、現在も大卒の新卒採用を続けている。


第二章 有効な採用方法へ続く