3Dプリンターに侵食される業界や加工
「噂の最新技術」として技術の将来性に想像を広げたのはもはや過去の話。3Dプリンターはニアネットシェイプの究極形として多くの企業に導入され、活用方法の検討段階から運用ノウハウの蓄積段階に入っています。
「まだまだ発展途上の技術だし、欠点や課題も多い。相手ではないね」
そんなふうに嘯く方にお会いしましたが、そろそろ真剣に3Dプリンター技術に対する自社技術の差別化、あるいは融和活用の方法を考えた方がいいかもしれません。なぜなら、すでに金属加工業界の一部の市場は侵食され始めているからです。
射出成型業界や鋳造業界に属するお取引先をお持ちの、金型メーカー様、機械加工業者様。最近受注額が減っていませんか。当初から試作品製作などの少量多品種生産の分野で優位性を発揮することが予見されていた3Dプリンターですが、この特徴はさらに洗練され、前述の二業界ではすでに製造工程の置き換えがかなり進んできています。
鋳造業界ではこれまで金型メーカーや機械加工業者へ頼ってきた鋳型模型の製作工程の一部に3Dプリンターを利用することが広まってきており、射出成型業界ではついに3Dプリンターの造形による金型製作が実現されてしまいました。いずれの場合でも3Dプリンターを用いた方が圧倒的に工程やコストが削減され、造形の自由度や管理上の利便性が高いのです。
「値段が下がったとはいえ、まだまだものづくりの最前線で使っていけるレベルの装置は数百万以上する。導入できる企業はそうあるまい」
私にお話を聞かせてくれた方はこんな風にも言っておりました。ですが政府が製造業の技術力向上を後押しする、補助金や助成金をはじめとした数々の施策がこの問題を簡単に解決してしまいます。こと、3Dプリンターを競合相手とする分野ではこうした支援策が返って製造業を営む企業の逆風となっているのです。
ここまでのお話は仮定のものではありません。立体造形が強みの加工技術は、すでに3Dプリンターとの市場争いが始まっているのです。粉末金属焼結技術の応用によって造形物を製作する金属3Dプリンターは、金属組織的には鋳造造形物よりも良質で高精度。将来的には現在利用している側の鋳造業界自体が市場を侵食される可能性がすでに見え始めています。
もちろん、3Dプリンターの造形は万能のものではありません。だからこそ、彼我の差をより明確にするべきなのです。みなさまは、お客様から問われてどんな風に答えるか準備はできていますか。